葉山嘉樹『坑夫の子』

プロレタリア文学の旗手の一人であるが、小林多喜二宮本百合子ほどには知られていない。ぼくも今まで読んだことがなかった。青空文庫で他の本を探しているときに眼に入ったので読んだのだが、なかなか面白かった。僅かな不注意、体調の悪化さえも重大な事故になる悪環境を放置する資本の故に事故死する坑夫たちと、その亡骸を見つめるその子らを冷静に描いている。冷静だが指摘であり、叙情的でもある。そんな短編であった。
我が祖父も事故のために隻眼だった。発破のスイッチを入れる人が誤って早押ししてしまったのが原因だと父母や叔父たちは言っていたが、その程度の安全弁すら当時の炭鉱には珍しかったのだろう。

逢坂冬馬 『 同志少女よ、敵を撃て』

すばらしい作品だった。この年になるとあまり大部の本は手に取るのが苦痛になる。この本も薦められたとはいえ、読み始めるのは少し躊躇した。しかし、長い作品なのに途中で止めることができない。アガサ・クリスティ賞選考において初めて全員一致で選出されたというのも無理はない。

内容について文句のつけようがない。強いて欠点を挙げるならば、賞の選者の一人も同じように感じたらしいが、タイトルに少し疑問を感じた。「敵」というのは、単にドイツ兵ではないのかも知れないが。

O・ヘンリー『水車のある教会』

O・ヘンリーの短編は全部読んだつもりだったが、これは読んでいなかった。しかも読後感は最高。楽しく面白い。

ただ、時代を考えればやむを得ないかも知れないが、ジブシーへの偏見をかき立てるような側面だけは残念。

ウクライナ侵略

一時休戦中だが、首都攻撃の危機は迫っている模様。経済制裁だけでは暴挙を防ぐのは無理か。米国は経済制裁を強めているが・・・

「米、ロシアの最恵国待遇撤回 各国と協調 ウォッカ・魚介類を禁輸」

ウォッカの禁輸か。

名画カサブランカの末尾で二人がヴィシー産のワインをゴミ箱に投げ捨てていたのを思い出した。