『笹の舟で海をわたる』

角田光代の『笹の舟で海をわたる』を読んだ。いつものように読み始めたら止められなくて最後まで一気に読んだ。気がついたら午前2時。

日本を代表する今の作家といえば村上春樹だろうが、ぼくは角田光代の方が好きだ。読んだ作品すべてというわけではないが、その多くに何かしら謎めいたものが存在して、解決するにせよしないにせよ登場人物はそれにこだわる。しかし、最後は悟りとも諦めともつかない心地よい状態で終わる。すなわち救いがある。この作品もそうだ。心地よさといっても歓びというほどではない。悟りと諦めの中間のような一応の納得、それが多くの作品の最後で示される。だから、不自然な高揚はないが安心して読める。この作品もそうだった。

最後の佐織の述懐

「ああやっぱり、悪いことをしたら不幸になるのでも、いいことをしたから幸せになるのでもない。そのどちらもが、人生に影響など及ぼさず、ただ在るのだ。ただ在る、でも私たちはそれから逃れられない。」