葉山嘉樹『坑夫の子』

プロレタリア文学の旗手の一人であるが、小林多喜二宮本百合子ほどには知られていない。ぼくも今まで読んだことがなかった。青空文庫で他の本を探しているときに眼に入ったので読んだのだが、なかなか面白かった。僅かな不注意、体調の悪化さえも重大な事故になる悪環境を放置する資本の故に事故死する坑夫たちと、その亡骸を見つめるその子らを冷静に描いている。冷静だが指摘であり、叙情的でもある。そんな短編であった。
我が祖父も事故のために隻眼だった。発破のスイッチを入れる人が誤って早押ししてしまったのが原因だと父母や叔父たちは言っていたが、その程度の安全弁すら当時の炭鉱には珍しかったのだろう。