定家明月記私抄続編(堀田善衛)

定家明月記私抄続編。(堀田善衛

吾妻鏡によって。鎌倉幕府の日常を眺めていると。いかに武家による。国家統治の草創期であるとはいえ。これほどにも血生臭い。政府というものは、世界史にも稀なのではなかったか、と思われてくる。政権は、ほとんど連続テロというべき手段によって維持されている。フランス革命時のテロ期が、これに匹敵するか、とさえ思われるのである。」

堀田善衛『定家明月記私抄』

堀田善衛『定家明月記私抄』ちくま学芸文庫、68ページ
「和歌とは何。それは、要するに、こたえる歌の意なのであり、それが原意である。つまり近、現代的な独立した一種の詩歌という意は原意には添っていないのである。それは常に応答、交換を期しているもので、場合によっては会話、対話の一種でさえある。従ってその実用の中には政治的応用さえもが入りうるのである。」

 これには驚いた。和歌の機能や役割については異論はない。特に平安時代においておや。しかし原意というのはどうだろう。ぼくは漢詩に対する和歌だと思っていた。長歌に対して短歌というように。倭歌という表現も見た記憶がある。

 

堀田善衛『バルセローナにて』

「問い自体が答えであるという事態は、人の世において、稀ではない。」

『バルセローナにて』には、「アンドリー村にて」、「グラナダにて」、「バルセローナにて」の3篇が収められている。この言葉は最後の「バルセローナにて」の中にある。

読後感:小林健一『米国の再エネルギー革命』

エネルギーや地球環境問題について人並みには憂慮しつつも、新聞、雑誌などの断片的情報に依存したままで本格的な研究書を読んだことがなかったので、本書は興味深く読んだ。

この4年間、トランプに関わるいろいろと不愉快なニュースを聞くたびに、このままでは地球環境が取り返しのつかない段階にまで悪化してしまうのではないかと恐れていたのだが、どうやら杞憂だったようだ。事実の提示とその丁寧な整理、それに基づくきわめて説得力のある議論によって、トランプ政権がアメリカのエネルギー政策の長期的趨勢に大きな影響を与えなかったという事実を。本書は明らかにしている。
同様に印象的だったのは、アメリカの原子力発電がコスト面でまったく競争力を失っているということ、エネルギー革命の推進のために発送電分離が重要な役割を演じたこと、シェール革命が石炭発電の凋落と同時に環境破壊の原因ともなったということなどである。
地球環境の保全アメリカだけの課題ではない、日本ももっと本格的に再生エネルギー革命に乗り出す必要があるのに現状はまったく不十分である、これも本書の「あとがき」で述べられている。この労作が広く、特に日本のエネルギー政策を支配している政府や産業界の人々に読まれることを希望する。

読後感:『ニューズウィーク』3月30日号

dMagazine で「NewsWeek」日本版の2021.3.30日号を読んだ。この雑誌、毎号日本の週刊誌よりも読んで感心する文章が多いが、この号は特に興味深い論説が多かった。なかんずく、レベッカ・オニオンの「ヘレン・ケラーSNSが牙をむく」と、西村カリンの「「レジリエンス」ではなく我慢する日本人」の2本に特に感銘を受けた。