読後感:小林健一『米国の再エネルギー革命』

エネルギーや地球環境問題について人並みには憂慮しつつも、新聞、雑誌などの断片的情報に依存したままで本格的な研究書を読んだことがなかったので、本書は興味深く読んだ。

この4年間、トランプに関わるいろいろと不愉快なニュースを聞くたびに、このままでは地球環境が取り返しのつかない段階にまで悪化してしまうのではないかと恐れていたのだが、どうやら杞憂だったようだ。事実の提示とその丁寧な整理、それに基づくきわめて説得力のある議論によって、トランプ政権がアメリカのエネルギー政策の長期的趨勢に大きな影響を与えなかったという事実を。本書は明らかにしている。
同様に印象的だったのは、アメリカの原子力発電がコスト面でまったく競争力を失っているということ、エネルギー革命の推進のために発送電分離が重要な役割を演じたこと、シェール革命が石炭発電の凋落と同時に環境破壊の原因ともなったということなどである。
地球環境の保全アメリカだけの課題ではない、日本ももっと本格的に再生エネルギー革命に乗り出す必要があるのに現状はまったく不十分である、これも本書の「あとがき」で述べられている。この労作が広く、特に日本のエネルギー政策を支配している政府や産業界の人々に読まれることを希望する。